物語22(狸の定吉物語) SADAKICHI

狸の定吉物語 TANUKI
お福『え!定吉さん…あなた、人間じゃなかったの?』

定吉『ごめんお福ちゃん、実はおいら狸なんだ。』

お福『そんな…』

定吉『狸じゃダメかい?』

お福『だって、彼氏が妖怪だなんて誰にも言えないもの。』

狸の定吉物語 TANUKI
定吉『昨日まであんなに好きだって言ってくれてたのに。』

狸の定吉物語 TANUKI
お福『ごめんなさいね、さようなら(妖怪なんて冗談じゃないわ、しかも狸だなんて)』

定吉『お福ちゃん…』


狸の定吉物語2 TANUKI
母『元気出しなさい定吉。』

定吉『うん、ただあんな急に態度を変えることないのにと思って、それだけだよ。』

茶太郎(父)『おまえもおまえだ、何も人間の幽霊と付き合うことはないだろう。江戸には可愛い狸がたくさんいるというのに。』

狸の定吉物語2 TANUKI
茶子(妹)『おにいちゃんまたフラれたの?』

狸の定吉物語2 TANUKI
定吉『おい茶子!またとはなんだ!』


狸の定吉物語3 TANUKI
定吉『…なんてきれいな人なんだ… だめだ、幽霊に惚れちゃだめだ!』

狸の定吉物語3 TANUKI
おばば『おや?どうしたんだい?んー?…おまえは狸だね?(まだ若いね、なにやら興奮して尻尾が出ちまってるよ)赤い顔して、もしやあたしに惚れたのかい?』

狸の定吉物語3 TANUKI
定吉『えっ?ち、違う、あんたじゃないよ、あの人だよ。』

おばば『ははは、あんた素直だね。それに狸のくせにお目が高いよ。おしづちょっとこっちに来ておくれ。』

狸の定吉物語3 TANUKI
おしづ『どうしたの?おばばさま。』


狸の定吉物語4 TANUKI
定吉『おしづさんはおいらが人間じゃなくても平気なのかい?』

おしづ『それはお互い様よ。そんなことは考えないで今を楽しみましょう定吉さん。二人ともそこらの人間よりは長生きかもしれないけど、それでも永遠じゃないわ、余計なことを考えたりしてたらあっという間にいなくなるものよ。』

定吉『そんなものかなあ。』

おしづ『夏はまだ先だしあたしたちにも時間があるの。よかったら狸の世界のことをいろいろ聞かせてほしいわ。』


狸の定吉物語5(最終回) TANUKI
おしづ『今日も楽しかったわ定吉さん。』

定吉『おしづさん!』

狸の定吉物語5(最終回) TANUKI
おしづ『あら…ごめんなさい、あたしの手に触れることはできないわ、幽霊なんだから。』

定吉『あっ…そうだった。』

狸の定吉物語5(最終回) TANUKI
おしづ『でも心になら、触れることはできるわよ定吉さん。』

定吉『は?…はあ…』

狸の定吉物語5(最終回) TANUKI
町人(妻)『ねえあんた、あの若い男、ひとりで何してんだろ。』

町人(夫)『さあねえ、でもなんだか幸せそうな顔してるねえ。』

狸の定吉物語5(最終回) TANUKI

《終わり》

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