拝啓
初秋の候 皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
親分、あっしはこの度かまいたち先生のご指導で長爪剣の妖術を会得いたしやした。
この際、自分がどれくらい強くなったか強者相手に腕試しをしようと思っておりやす。
もちろん負けたら命はないものと覚悟しておりやすが、この身勝手を何卒お許しくだせえませ。
ハチ
ハチ『(どこにも隙がない… きっとこの人がいま噂の月に代わってお仕置きよの姉さんに違いない。それにしてもなんて長い名なんだ。他に呼び名はないのか… )』
月に代わってお仕置きよの姉さん『(なにあの変な笠… 吹き出しそうになっちゃった。いけないいけない、怒らせたらめんどくさいことになるわ。)』
↓
翌日
↓
『おや?何かしら… 』
『ハチ? 誰…知らないわねぇ。この時間はお昼寝の時間だし… ああなんかこういうのめんどくさい。』
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翌日
↓
ハチ『いざ!月に代わってお仕置きよのねえさん覚悟!』
月に…のねえさん『あら、昨日の変な笠の猫ちゃんだったの… それはたしか かまいたちの妖術… なかなかやるじゃない猫ちゃん!』
ハチ『さっきからずっと剣を受けてばかり… これが江戸一番の剣士でやすか? 人の噂はあてにならないでやす。』
月に…のねえさん『そろそろいくよ猫ちゃん!』
ハチ『手… 手が勝手に… 』
ねえさん『自分が猫だってことを忘れてたなんて、無用心にもほどがあるわね。 妖術でいくら強くなっても、あんた かまいたちじゃ無いのよ。』
ハチ『あっしが未熟でやした… 修行をやりなおしやす。』
ねえさん『またいつでも受けて立つわよ。なんだかそのおかしな笠も気に入ったことだし… 』
↓
しばらくして
↓
『だいぶ耐えられるようになってきたじゃないか、もう少しだよ。』
ハチ『はい、ありがとうごぜえやす。』
拝啓
親分、あっしは今、あの有名な「月に代わってお仕置きよ」のねえさんの家でごやっかいになっておりやす。弟子はめんどうだからとらないということでやしたが、短い間だけという約束で無理を言って教えを頂いておりやす。それではまたしばらくのご無沙汰を。
敬具
ハチ
《終わり》
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